「幼い頃から大病したこともないし、注射嫌いで病院嫌い。その時が生まれて初めて受けたまともな健康診断でした」(撮影:本社写真部)
デビュー後すぐに一世を風靡したお笑いコンビ「はんにゃ」の川島章良さん。2014年、32歳の若さで突然がん宣告を受けました。がん治療をしながら結婚、父親となりその後は「だしをきかせた」料理で18キロものダイエットにも成功。病を得たからこそ拓けた道のりを語ります(構成=岡宗真由子 撮影=本社写真部)

子を持つことにも不安が

今から5年前、つき合っていた彼女の妊娠がわかり、プロポーズのために温泉旅館に泊まった日のことです。数週間前に健康診断を受けていた病院の先生から携帯電話に直接連絡をいただきました。

「次回いらっしゃるときはご両親やマネージャーさんといらしてください。大切なお話があります」という、ドラマのような言い回しで。慌てて「今教えてください!」と詰め寄ったところ、「腎臓がんの疑いがある」と。その日は腎臓に怪しい影がある、という話にとどまりましたが、一気に恐怖が頭を駆け巡りました。

「死ぬんだろうか」という思いの後に浮かんできたのは、「このまま家庭を持っていいのか? 遺伝するがんもあると聞いたことがあるし、こんな僕が子どもを持っていいのだろうか?」という、極限までネガティブな考えでした。

ネットで調べると、腎臓はリンパ管がたくさん通っている臓器で、転移の可能性も高い、そして腎臓がんは死亡率もめちゃくちゃ高い、と書いてある。腎臓で見つかったものの、もしかしたらがんの震源地(原発巣)はほかにあるかもしれない。見つかった時点でステージが高いことも多い――。

腎臓が使えなくなったら、透析が必要になる。ロケ先で透析できる場所を探し、現地で受けたりすることはできるのだろうか? がんのステージもわからないうちに、悪いことをたくさん考えてしまいました。

飲酒は週に2、3回でしたけど、暴飲暴食はしてました。大食いのロケって、その後、逆にお腹が空いてしまうんです。ロケ後に先輩に誘われて夕飯をたらふく食べて、深夜にもう一度ラーメンをかっこむ、なんていう生活を何年か続けていたんです。江戸時代の奇病かっていうくらい腹が異常に出てましたね。とはいえ何も自覚症状がなかったので、自分ががんになるなんて、まったく予期していなかった。ショックは大きかったです。

幼い頃から大病したこともないし、注射嫌いで病院嫌い。その時が生まれて初めて受けたまともな健康診断でした。「まともな」というのは過去、1回6000円の、吉本興業の健康診断は受けたことがありましたが、その検査以来病院に近づいてなかったんです。

でも彼女が妊娠し、結婚したいと思ったので、彼女の勧めもあって「じゃあ健康診断ぐらい受けとくか」と自分で病院を探して。血液、尿、CT、エコーっていう最低限の項目だったのですが、CTでがんが判明しました。画像診断の先生の腕が良くて、微妙な影を発見してくださって。本当に奇跡的に発見できたという感じです。