犯罪者の心に思いを巡らせて
宮藤 古田さんから連続不審死事件の死刑囚、木嶋佳苗の話をやらないか、と以前から言われていたのが、ようやく舞台でできることになって。古田さんって実際に起きた事件の話が大好きなんですよ。
古田 ノンフィクションとかルポとか、本が出るとすぐ買っちゃう(笑)。シリアルキラーも、詐欺師も、新興宗教ものも。
宮藤 僕も脚本を書くにあたって木嶋佳苗に関するいろんな資料を読んだんですけど、あんなにひどい事件を起こすに至った背景がまったく見えてこなくて。いまだに不思議な気持ちです。
清水 普通は捏造しそうなものだけどね。「実は私、かわいそうな人生だったんです」とかって。
古田 それが一切ないから、逆にこわいんだよ。
宮藤 なにか読み取ろうとしても、大好きなお父さんと仲良くしてたら、それに焼きもちを焼いたお母さんが虐待してきたので嫌いっていうところくらい。でも犯罪者の背景としては、いまひとつなにかが足りませんよね。
古田 関西青酸連続死事件の筧千佐子も面白いよな。
宮藤 鳥取連続不審死事件の上田美由紀も。それぞれにみんなタイプが違いますけど、騙された男性たちがまんざらでもないところは共通していますね。「嘘でしょ?」っていうぐらい、全員モテてる。
古田 犯罪者がなにを考えてるか、なんでそんなことをしようと思ったのか、不可解だから興味があるんだろうな。痴漢で言えばさ、なんでここでおっぱい触ったらダメだって思わなかったのかな、って思う。それを演りたい。その不可解な人を演りたいんだよ。
清水 そういうエグさは、演劇だから表現できるのかもね。脚本を書いてて入り込みすぎて、自分が危うい気持ちになったりしない?
宮藤 それは平気ですね。逆に気持ちが離れていって、楽しく書けるのかもしれない。
古田 そういうのばっかり読んでると、どんどん冷静になるし、人にも優しくなれるよ。(笑)