個室に戻ってベッドに飛び乗ると、早速、メールを書きはじめた。
「ちょっと聞いてくださいよ。私のデブはすべてむくみだったんですよ! 利尿剤を飲んだら元の姿に戻りましたよ!」とタイプして送った。フフフ、編集者たちも喜んでくれるだろう。これでバッチリだ。なにがバッチリなのかは不明だが、それでも私は楽しくてたまらなかった。そのうえ、呼吸も楽になっている。膨れ上がっていたお腹も凹み、とにかく体が軽くて仕方がない。この時点で、入院直後からずいぶん体重が減っていたのだから、当然のことだ。きっと胸水も少なくなっていることだろう。
売店には行って下さってもかまいませんよ
朝食が済んだころ、前の日に病室にやってきてくれた男性医師が再び現れた。
「村井さん、調子はどうです?」 私は張り切って答えた。
「絶好調です! トイレは通いっぱなしですけど!」
医師は私の顔を見ると少し笑って、「お薬、効いてるみたいですね。ずいぶん顔色が良くなりました。もう少し飲み続けてみて、様子を確認しましょう。その後、もう一度レントゲンを撮って、ちゃんとお水が抜けているかどうかの確認をして、そして体調が整ったところで、本格的な検査がはじまります。お部屋でゆっくりしていてくださいね。くれぐれも、無理はされないようにお願いします。売店には行って下さってもかまいませんよ」
私は心のなかでガッツポーズを出した。病院の売店は、私にとって、様々な思い出が詰まっている場所だ。入院していた子どものころ、母に売店に連れて行ってもらい、おかしを買ってもらうのがなにより楽しみだった。私にとって、病院の売店は、病院の外の世界との唯一の接点のような場所でもあった。絵本、まんが、シールブック、ぬりえ、カラフルなキャンディー。今思い出しても胸がわくわくする。