愛犬ハリー(撮影:村井理子さん)

この素晴らしいニュースを伝えねばならない!

私は歯ブラシを投げ出すように洗面台に置き、大急ぎでうがいをしてタオルで乱暴に顔を拭くと、スタスタと急いで待合室まで向かった。そこにはソファと体重計が設置されているのだ。待合室のソファには、テリトリー侵害をするベテランと、その仲間の患者さん数人がすでに座っていて、ものすごい勢いで歩いてくる私を驚きの眼差しで見つめていた。

私は彼女らに挨拶をすることも忘れ、急いでスリッパを脱いで体重計に乗った。前日に比べて、なんと2キロも減っていた。あの小さな青い錠剤が、私の体内に溜まっていた余分な水分を排出し、そして元の姿に徐々に戻しているというわけだ。なんという効き目、人体の不思議。私は大いに感激して、自分の両手をまじまじと見つめながら、体重計に表示された数字を何度も確認した。

そんな私にベテランが声をかけてきた。
「部屋、移ったの?」
「ああハイ……」 私の視線は自分の両手に釘付けのままである。
「なんか悪かったねえ、大騒ぎしたから」
「ああ、いやいや……ぜーんぜん、オッケーって感じです……」 私の視線は両手と体重計の数値の間を行ったりきたりだ。
「あたしが移ればよかったんやろか」 ベテランは暗い声で言った。私はそこでようやく彼女の言葉の意味に気づき、しっかりと彼女に答えた。
「いや、気にしないでください。すべて私の事情ですんで。それじゃ」

私はこれ以上無理なほどあっさりと答えると、両手を飛行機の翼のように広げつつ、早足で自分の病室に戻った。この素晴らしいニュースを、編集者たちに伝えねばならないのだ!