さて、いよいよ全身麻酔だ(クリニックにて)写真提供:末井さん
編集者で作家、そしてサックスプレイヤー、複数の顔を持つ末井昭さんが、72歳の今、コロナ禍中で「死」について考える連載「100歳まで生きてどうするんですか?」。思い出すのは14年前、フラフラするので病院にいったところ、人間ドックをすすめられた末井さん。その結果は果たして……

第1回●100歳まで生きてどうするんですか? 〜パンデミックと生前墓

「人間ドックでもやってみますか?」

14年前のことです。道を歩いていると、歩いている人の引力に引っ張られて、フラフラその人の方へ寄って行って怪訝な顔をされることがありました。真っ直ぐ歩けないので、頭の中に問題があるのではないかと思って、行きつけのクリニックに行きました。

MRIで頭を調べてもらったのですが、異常は見当たりませんでした。院長先生は小さいトンカチでぼくの膝を叩きながら、「人間ドックでもやってみますか?」と言いました。そう言えば、人間ドックなんて何年もやってないし、年も年だし、やってみることにしました。

通常の検査の他に、オプショナルで胃と大腸の内視鏡検査もあったので、それも追加してもらいました。大腸の内視鏡検査は他のクリニックで1回だけ受けたことがあるのですが、大腸がカーブしているところに内視鏡が当たると、下痢をもよおしたような、なんとも言えない気持ちの悪い腹痛があったので、そのことをクリニックの看護師さんに言うと、胃の検査も大腸の検査も全身麻酔でやるので苦痛はないと言われました。

最初の内視鏡検査は胃でした。前日の9時から食事を抜いてクリニックに行きました。検査着に着替え、治療用のリクライニングチェアで栄養剤の点滴をしてもらい、胃を膨らます薬を飲み、点滴をしたまま内視鏡検査用のベッドに連れて行かれました。そのベッドに寝かされ、鼻に酸素吸入のチューブが取り付けられ、指に心拍数を測定するセンサーが挟まれました。壁には「全身麻酔で呼吸困難あるいは心肺停止になった時の応急処置」という図解入りのポスターが貼ってあります。

そう言えば、最初に何か誓約書のようなものにサインさせられました。よく読まなかったのですが、もし死んでも文句は言わないと言うようなことが書かれていたのかもしれません。このままあの世行きというのも可能性としてはあるのだろうと思いましたが、不安ではなく、逆に自分の体がどうなるかワクワクしていました。