散髪しに出かける。この美容院では最高齢(代官山・OOOYY)写真提供:末井さん

死ぬ時はこんな感じなのでは?

話が横道に逸れてしまいましたが、数日後に、大腸内視鏡検査も受けました。

今度は、麻酔薬が入ってから意識がなくなるまでの4、5秒間を、10秒ぐらいに引き延ばし、その時の状態を細かく観察しようと思って、「お薬入りますよ」と先生が言った時、グッと目を見開いて体にも力を入れていましたが、無駄な抵抗だったようです。4、5秒で意識がなくなりました。

この2回の全身麻酔体験で感じたことは、死ぬ時はこんな感じなのではないかということです。麻酔薬が体に入ってきた瞬間のドキドキする気持ち、体の末端から温かくなってきて、体がふあっと浮いたようになって意識がスーッとなくなっていく時の気持ち良さ、満ち足りたような精神状態、これらのことが、わずか4、5秒で起こるのです。

ぼくぐらいの年になると、お葬式に参加することが多くなります。2018年は17人の友人知人がな亡くなりました。全部のお葬式には参加していませんが、喪服を着ることが多かった年です。

お葬式で、親しい人の場合は、棺の蓋を開けてお顔を拝見することがありますが、どの方も穏やかで優しい顔をしています。睨みつけているような顔は見たことがありません。葬儀屋さんが色々なテクニックで、顔の表情を変えるということもあるかもしれませんが、ぼくは全身麻酔の経験から、死ぬときはみんな穏やかな顔になるのではないかと思いました。