講談師を志す女性の背中を押した
さらに大師匠は、講談師の多様性を多くの人に説きました。圧倒的な男性社会であった講談界で、多くの女性の弟子を積極的に取った。その後、女流講談師が躍進したことは、間違いなく大師匠の功績でしょう。賛否両論を巻き起こした田辺一鶴(たなべいっかく)先生の芸を認め、その背中を押したことも同様です。江戸や明治のわずかな例外を除いて、一鶴先生は女性を弟子に取った嚆矢(こうし)でもありました。
二代目山陽が亡くなって、二十年。
令和の時代にも、二代目山陽は生きています。師匠の松鯉をはじめ、多くの先生方を通して大師匠を感じていただきたい。年齢や男女を問わず、現代の講談師の中に大師匠は生きているのです。
私も改めて本書をひもとき、大師匠の痛快な「高跳び」を味わい尽くそうと思います。
もちろん、この本は、すべて大師匠の視点で書かれています。別の講談師の視点もあるんだということも、忘れないでください。
そして、三代目の山陽兄さん、もうそろそろ講談界に戻ってきてほしいです。喫茶店で「アイスコーヒー」を頼む口跡(こうせき)がやたら良い人がいたので、顔を見たら三代目だったという。そんなツチノコみたいな都市伝説ではなく(笑)。
こちらは「高跳び」しすぎです。
今後とも、二代目山陽一門を、ひいては講談界をお楽しみいただければと思います。