講談師を志す女性の背中を押した

さらに大師匠は、講談師の多様性を多くの人に説きました。圧倒的な男性社会であった講談界で、多くの女性の弟子を積極的に取った。その後、女流講談師が躍進したことは、間違いなく大師匠の功績でしょう。賛否両論を巻き起こした田辺一鶴(たなべいっかく)先生の芸を認め、その背中を押したことも同様です。江戸や明治のわずかな例外を除いて、一鶴先生は女性を弟子に取った嚆矢(こうし)でもありました。

「ただいま門弟は、13人。うち7人がなんともたのもしき女性講談師です。将来が大いに楽しみ。写真は、NHKリハーサル室で立体シラバを指導中。左から紅、紫、香織、すみれ、陽子。いずれも亭号は神田です。」(『桂馬の高跳び』より)

二代目山陽が亡くなって、二十年。

令和の時代にも、二代目山陽は生きています。師匠の松鯉をはじめ、多くの先生方を通して大師匠を感じていただきたい。年齢や男女を問わず、現代の講談師の中に大師匠は生きているのです。

私も改めて本書をひもとき、大師匠の痛快な「高跳び」を味わい尽くそうと思います。

もちろん、この本は、すべて大師匠の視点で書かれています。別の講談師の視点もあるんだということも、忘れないでください。

そして、三代目の山陽兄さん、もうそろそろ講談界に戻ってきてほしいです。喫茶店で「アイスコーヒー」を頼む口跡(こうせき)がやたら良い人がいたので、顔を見たら三代目だったという。そんなツチノコみたいな都市伝説ではなく(笑)。

こちらは「高跳び」しすぎです。

今後とも、二代目山陽一門を、ひいては講談界をお楽しみいただければと思います。