疲れている時は、おにぎりを握るだけでも大丈夫。「おいしくなあれ」と心で念じれば、ごちそうに(『いのち愛しむ、人生キッチン』(桧山タミ:著 文藝春秋)より)

その土地、季節のものをいただくということ

食事は、体の声に耳を傾けて腹六分目まで。栄養バランス以上に、食べすぎて消化が追いつかないことのほうが体には毒です。50歳を過ぎれば、次の食事が楽しみになるくらいの量がちょうどいいんじゃないかしら。献立は、主食の穀物とお味噌汁、そしてお野菜たっぷりのおかず。簡単なものでも家で食べるのが好きです。

私が何より大切にしているのは、日本の気候風土に合った食材を食べること。「身土不二(しんどふじ)」といって、地元でとれた旬のものを食べることが一番体にいいんですよ。

先人は、土地のもの、季節のものを食べることで生き抜いてきました。寒い地方には寒さに耐えるための野菜が育ち、暑い土地には発汗作用を促す果物がなるのですから、自然は本当にうまくできています。ありがたいことです。今は季節はずれのものも手に入りますが、体が欲していないものを食べて、知らず知らず不調になっていませんか。

昔、母が病弱だった私の具合に合わせて作ってくれていた食事は、塩を加減したり、消化にいい食材を使ったものだったり。長生きできたのは、食べることを養生と心得てきたからだと思います。わが家は11人きょうだいですから、学校のお弁当も、おにぎりと漬物という簡単なものでした。でも、そのふんわり握ったおにぎりが何よりも美味しくて。作る人の気持ちって、料理を通して相手の心に入り込むの。特別なごちそうが必要なわけではないのです。

時間をかけずとも、旬の野菜なら蒸すだけ、ゆでるだけでも十分栄養価が高く、とても美味しい。たとえばお味噌汁一品でも自分で作ると、体にいいのはもちろんのこと、心まで温まります。

梅干しは、桧山さんにとって健康のお守り薬(『いのち愛しむ、人生キッチン』(文藝春秋)より)