発掘現場で感じた死の恐怖

ちょうどその頃、ある地方都市で、全国から学生を募って、発掘調査が行われることになった。期間は1週間と短期だし、なんとかこなせるだろう、この発掘調査に参加して、成果を教授に報告する……そんな自分を想像していた娘。しかし現実は違った。

早朝から作業をするので、宿泊先の食堂が開かないうちに出かけ、夜は疲れすぎて食事も摂らずに眠る。なんとしてでもやり遂げたいという気持ちだけで毎日を過ごしたが、明日は帰宅という日、とうとう現場で倒れてしまった。

私が迎えに行って自宅に戻れたものの、ここからが本当の試練の始まりだった。歯が痛い、頭が痛い……そんなことを言っては、数日間寝込んでしまう。動悸や胃痛、胸の痛みまで訴える。私は心配しすぎて疲労困憊。それでも娘は症状が治まると大学に行き、ゼミの合宿も這うように参加していた。

しかし娘の心は決まっていた。考古学の教授の夢はあきらめることを。死の恐怖を感じた発掘現場から去ることが、健康を取り戻す唯一の手段だと思ったのだろう。そして考古学者には体力が必須なのだと感じたに違いない。その後も、体に痛みを感じては寝込み、病院通いの日々が続いた。