母と食べたお弁当

運動会の日、お昼には、チェックのビニールシートを出して、お弁当を広げた。父も学校の教師で、しかも小学校勤務だったので、ほとんど運動会には来なかった。

母と祖母と、弟とわたしと。ビニールシートの上で母の作ったお弁当を開けた。

そこには、ベタベタとしたおにぎり、ノリがふにゃふにゃで辛うじてくっついているもの、手に持つとノリがこちらにくっついてきて、ああもう、となるやつ。一面だけ真っ直ぐに焦げて、あとの部分は生を思わせるウインナー、卵焼きなんだろうが、ものすごく薄い、味のないもの、たまに異常にしょっぱいもの……それらが入っていた。母のお弁当といえば、だいたいそれだった。

母は、料理が得意ではないし、多分当時は好きでもなかった。わたしたちのごはんは、いつもおばあちゃんが作ってくれていて、週末の夜は外食が多かった。誕生日には、「ステーキのあさくま」に行った。デザートには、バニラアイスの上に花火が乗って運ばれてきた。それが楽しみで、わたしは、「どこがいい?」と聞かれると、必ず「あさくま」と答えた。

昨年、30年ぶりか、もっとか、「あさくま」に行った。静岡の店舗に友人と入ったのだ。懐かしいなぁーと思いながら。もちろん当時とはメニューもきっと違うし、土地によって、内容も違うだろう。だけど、懐かしかった。サラダバーとスープバーをとり、席につき、コーンスープを口にしたとき、ふっと母を思った。そして、泣いた。わたしの母の思い出が蘇る味は、これだった。あさくまさんのコーンスープ。

これが、母の、味だ。

だから、今日のところは、わたしはスープが好きなんだ、ということにしておこう。

青木さんの連載「47歳、おんな、今日のところは「●●」として」一覧