「《ありがとう》といった感謝の言葉は折々に言っています。うちの家族は、誕生日はもちろん、父の日、母の日、クリスマスなど、ことあるごとに、互いにプレゼントを贈り、メッセージを渡すのが習慣になっていますから。」

妻への誓い、子への愛

妻のさち子さん(元女優・和由布子さん)とは結婚32年目。二男一女に恵まれ、家庭の存在が五木さんの原動力でもあるという。


子どもたちの学校行事には、ほとんど欠かさず出席してきました。それに合わせて仕事のスケジュールを組むんです。運動会が9月5日とわかっているなら、1ヵ月続く舞台公演は9月ではなく10月にしようとか。地方での仕事と子どもの行事が重なったときは、仕事を終えてから徹夜で車を走らせて東京に戻り、朝の行事に間に合わせたこともありました。子ども3人、みな同じようにやりましたよ。

僕が『紅白歌合戦』に出るときは、子どもたちと妻とで「頑張って歌ってね。テレビで観てるから」といったメッセージを大きな紙に書いてくれたりもしました。それを楽屋の鏡台の前に貼り、「よし、頑張って歌うぞ」と励まされたことは何度もあります。

嬉しかったことでいえば、数年前、娘が1年間のアメリカ留学から帰ってきたときのこと。僕の誕生日にお祝いの言葉として、こんなメッセージを読み上げてくれたのです。ニューヨークにいるあいだ、ずっと五木ひろしのアルバムを聴いていた。それまで父親の歌う姿を主にテレビで観ていたけれど、あらためてアルバムを聴いて、泣けてきたのだ、と。アルバムのCDを留学先に持っていっていたことも知らなかった僕は、娘の言葉に胸を詰まらせたものです。

妻にも感謝です。子どもを産み、育ててくれ、僕がいつもベストな状態でステージに立てるよう、細かな配慮で支え続けてくれている。それだけでもありがたいのに、数年前からは、僕の会社・五木プロモーションのことも任せていますし、本当に頭の下がる思いです。

「ありがとう」といった感謝の言葉は折々に言っています。うちの家族は、誕生日はもちろん、父の日、母の日、クリスマスなど、ことあるごとに、互いにプレゼントを贈り、メッセージを渡すのが習慣になっていますから。

結婚したとき、女優をスッパリやめて家庭に入ってくれた妻に対し、「この人と結婚してよかった」と思えるような仕事をしなきゃいけない、と誓いました。そして子どもが生まれたときは、「この両親のあいだに生まれてよかった」と思えるような家庭にしなければと。

僕は歌うこと、音楽のことしか知らない人間ですけど、親として後悔のないように一所懸命に愛情を注いでやってきたつもりです。夫としては――結婚当初の誓いは今も胸にありますが、妻はどう思っているでしょう。(笑)