2019年の「五木先生の歌う! SHOW学校」より。左から、はやぶさのヤマトさんとヒカルさん、川上大輔さん、椎名佐千子さん、五木さん、坂本冬休みさん、徳永ゆうきさん、辻葉子さん(写真提供:五木プロモーション)

 

昭和歌謡を継承していきたい

コロナ禍で舞台やコンサートが行えなかったり、開催するにも制約がたくさんあるなか、僕もネットでのライブ配信など、初めての試みを行いました。そうして感じたのは、これからの音楽ビジネスは大きく変わっていくだろうということ。CDから、ネットでの配信へ。実際、配信では再生回数が何千万回、何億回だとかね。あっという間に音楽が世界に広がっていく、その可能性のすごさに驚くばかりです。

外資系のレコード会社に勤めている長男の話では、ニューヨークではすでにCDショップがなくなってきているそうです。レコードやCDによって作品を届ける、という生き方をずっとしてきたアナログ世代の僕としては、歌謡曲や演歌の世界がすべて配信によって届けられる、それでいいのかな、という葛藤があるのも正直なところなのですが。


日本の歌謡史をテーマにしたコンサートやアルバムの制作にも力を入れている。昭和の歌謡曲を次の世代に伝えたいという思いからだ。


僕が長く歩いてきた昭和の時代は、流行歌といえば歌謡曲が絶対的でした。平成から令和へ時代が移り、今は、歌の作り方から歌い方まで、昔とはまったく違います。

それを受け入れつつ、そんな時代にあってなお、先輩たちが作り上げてきた歌謡曲を後世に残したいと強く思うのです。輝かしい歌謡史を、先人たちへの敬意とともに、次の世代に継承するための橋渡し役となりたい。それが、半世紀以上も歌謡曲や演歌を歌い続けてきた僕の使命でもあります。

歌謡曲や演歌を歌う今の若手たちは、時代の音楽にも敏感です。話題になっているもの、ひそかにブームになっているもの、あらゆるものを聴き、知ったうえで、演歌を愛し、歌っているわけです。だからこそ、「継承」という意味でも彼らに期待したいのです。そのためには、まず僕自身が頑張っているところを見せなければいけませんが、このこともまた僕のエネルギーの源になっています。

年明け早々の1月14日から東京・明治座で11日間、「五木先生の歌う!SHOW学校」という舞台を行います。(※緊急事態宣言を受け公演延期)若い歌手を生徒役に迎え、僕のムチャぶりに生徒たちが応えるのですが、台本はなく、すべて僕のアドリブ。笑いをちりばめながら歌を教えるというエンターテインメントショーです。

昭和の名曲を若手の歌手に知ってもらいたいとの願いを込めた舞台。彼らの勉強にもなるし、テレビで演歌や歌謡曲の番組が少なくなるなか、若手が活躍できる場、新人がメジャーになるきっかけになれば、という思いもあります。

僕自身についていえば、3月で73歳。今も、「あれもやりたい」「これもやりたい」と、次から次へと新しい企画が自分のなかで生まれ、意欲満々。衰えの自覚なんてありません。それどころか、まだ進化しようとしているのでは、と思えるくらいです。

コンサートでよく言うのです、「僕は80歳、あるいはそれ以上まで頑張ります。でも僕ひとりだけではダメ、みなさんも元気でいないとね」。年配のお客さまほど、そこでどっと笑ってくれます。

これからは、やりたいことに対し、声や体力を含めてどこまで自分がやっていけるかが勝負となるでしょう。このチャレンジもまた、僕にとっては楽しみなのです。