「私はこのまま、死ぬんだろうな」

入浴できないのでにおいも気になり、再開された会社にも行けなかった。コンビニで小さな菓子パンが5個入っている袋を100円で購入。それを1日1個食べた。しかし3000円の所持金は間もなく尽きる。空腹を抱え、「私はこのまま、この公園で死ぬんだろうな」と思った。

携帯の充電がなくなりかけたとき、意を決して相談ダイヤルに連絡すると弁護士とつながり、瀬戸さんに取り次がれた。5月18日、すぐさま1週間分の生活費と宿泊代4万5000円(返済不要の一時金)を渡され、やっと落ち着きを取り戻した。その後、生活保護を申請したところ、6月初めに受給が決定しアパートに移った。

現在は家賃5万4300円のアパートで一人暮らし。支給される生活扶助費で光熱費、食費、携帯代などを払うと、わずかしか残らない。ケースワーカーの勧めで心療内科を受診したところ、複雑な生い立ちが原因のPTSDと診断された。父から虐待を受け、中卒の16歳で家出。人の何倍も働いて子ども2人を育て、1人は独立、1人は元夫のところにいる。働き詰めだったので、静養するように医師から言われている。

「生活保護は受けたくなかったけれど、コロナの影響で雇用が不安定になったので仕方なかった。でも離婚して置いてきた子どもたちへ月に10万円以上送金してきたので貯金ができなかった。やりくりが下手だったのです」

田中さんは自己責任と言うが、貧困は自己責任ではない。低賃金で不安定な仕事を強いられても、生活保護受給は恥ずかしいと支援につながれなかった結果なのだ。

9月末、田中さんは就職して収入を得たため、生活保護費も減額。生活保護からの脱出の日は近い。

雇用、DV。コロナ禍は、私たちが住む社会に潜んでいた歪みを顕在化させた。さらなる感染拡大も憂慮されるなかで、大きな選択をせざるをえなかった彼女たち。困窮する女性たちが孤立することなく、早めの支援につながる社会でなければいけない。


ルポ・女性が直面する収入減・雇い止め・DV 社会の歪みをコロナがあぶり出した
【1】資格があるから再就職も簡単だと思っていたけれど
【2】DV被害でシェルターに逃げ込んだ後、コロナ禍拡大
【3】感染者が出て職場が閉鎖し給料が激減。シェアハウスも追い出され