編集担当によると、今回の事件が「校了直後だったら機械を止めてでも加筆修正すべきだったかもしれません」とのこと。

この本は、ロヒンギャ危機を長期的な視点から検討していて、そう簡単には古びないように執筆しています。ですが、第2次アウンサンスーチー政権の成立を前提に書いている部分があり、非常事態宣言後の刊行であれば、その部分の書きぶりはきっと変わっていたでしょう。

いまさら内容を変えるわけにはいきませんが、以下、今回の非常事態宣言がロヒンギャ危機に与える影響について、簡単に補足します。拙著をもう読んだ方はもちろん、まだ読んでいない方にも役に立てば幸いです。

ミャンマー・ヤンゴンでの宗教間対話集会(2017年10月筆者撮影)

 

2月1日クーデターとロヒンギャ難民の今後

アウンサンスーチー政権下(2016年〜)での文民政権と国軍との間には、常に緊張関係がありました。それは拙著のなかでも指摘しています。長く敵対関係にあった両者の間でぎりぎり保たれていたバランスが、2月1日、国軍の権力奪取というかたちで崩れてしまいました。

今回の非常事態宣言は、2011年の民政移管(軍事政権から文民政権への移行)の後にこの国が進めてきた、民主化、自由化、経済改革、外交関係の拡大といった流れを逆行させかねない重大事です。下手をすると、かつての軍事政権時代に逆戻りです。