国軍が国家の中心にいる限り、ロヒンギャ問題の解決は遠のきます。なので、5年ごとに選挙を繰り返して、国軍から少しでも距離のある文民政権が続くことが大事でした。国会の議席の4分の1を軍人議員が占めるような不完全なデモクラシーであっても、また、アウンサンスーチーの政権運営にさまざまな問題があったとしても、文民主導の政権とその選挙による制度に従った入れ替えを、だましだまし続けることで、多少なりとも民主的な政治のルールを定着させる必要がありました。
今回の国軍の政治介入で、ただでさえ弱々しかったミャンマーの民主化過程は後退を余儀なくされます。このまま、アウンサンスーチーらの拘束が長引き、反対する市民らに対して国軍が暴力を行使すると、国内外からの批判はさらに広がることが予想されます。仮にアウンサンスーチーが解放されても、2020年選挙の結果を国軍が否定している限り、統治者の正統性をめぐる争いには折り合いがつきません。
選挙で有権者の6割を超える人たちが投票した政党を受け入れられない国軍が、ロヒンギャという、宗教的少数者(ムスリム)で、しかも無国籍の立場に置かれてきた人々を受け入れることを、私は想像できません。