すると主治医は、え? と驚いた顔をして、そして笑顔を浮かべると、「そんなことないですよ。治療をすればとても元気になります。だってそのための治療ですから」と答えてくれた。

私は主治医に「そうですか。よかったです。手術、がんばります」と返した。とてもうれしかった。そして慌てて、「いろいろと、本当にありがとうございました」と付け加えた。彼女が助けてくれなければ、危うく手遅れになるところだったのだ。

主治医は、「検査はすべて終わりました。これからはゆっくり体を休めてください。もう少しだけ、入院していてくださいね」と言い、カートを押しつつ、病室から出て行った。そんな彼女の後ろ姿に、私はもう一度「先生、ありがとうございました」と声をかけた。

 

「すぐには死なないって、先生言ったよね?」

私は主治医が病室から遠ざかったのを確認すると、すぐさま夫に話しかけた。

「すぐには死なないって、先生言ったよね?」 すると夫は、
「言った、言った」と答えた。

「でも手術だって言ったよね?」と私は聞いた。
「言ってた。残念だけど。でも、転院先に有名な先生と専門チームがいるから、安心だってことだった」と夫は答えた。

「そうだよね」と私は念を押した。
「そうそう」と夫は答えた。

「じゃあ、安心だよね?」 私はしつこく確認した。
「楽勝」と夫は答えた。

「よかった。助かったね」と私が言うと、夫は、「そうだね」と答えた。そして、子どもたちが帰ってくるからもう行くわと言って、あっさり帰って行った。