「先生、手術ってことは、開胸手術ということですか?」と聞くと、主治医は困ったような笑顔を見せながら、「ええ、そうなりますね」と答えてくれた。やっぱりそうだった。私の生涯二度目の開胸手術が決定した瞬間だ。夫の顔をちらりと盗み見ると、真っ青になっていた。

神妙な顔のハリー(写真提供:村井さん)

「大学病院への転院をお勧めします」

「病名は僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁という心臓の弁が、正常に機能していない状況です。それが原因で息切れが起きたり、その他のさまざまな症状が出ているということです。このままでは普通に生活することはできません。薬では、どうにもならない状態です。

実は、県内に僧帽弁閉鎖不全症の手術でとても有名な先生がいらっしゃいます。その先生の病院には専門チームもいますし、環境も整っているんです。ここよりも、そちらの病院の方がいいでしょう。大学病院への転院をお勧めします。私の方から連絡を取って、初診を予約します。なるべく早くに診ていただけるようにしましょう」

私は主治医の言うことをしっかりと聞き、すでに覚悟を決めていた。そして「わかりました、よろしくお願いします」と答えた。動揺はしていたが、取り乱すようなことはなかった。それでも、どうしても聞いておきたいことがあった。どれだけ愚かだと思われようとも、しっかりと確認したかった。だから主治医に質問をした。

「先生、私は手術をしたとしても、比較的近い将来に死にますか?」