「交感神経の数値が高すぎて、『これでは車のアクセル全開で急カーブを曲がるようなものですよ』と主治医の先生に言われたのを覚えています」(松本さん)
そもそも私たちが日常的に感じている《疲れ》の正体は何でしょうか。不規則な仕事や子育て、親の介護に追われ、いつも体の不調に悩まされていたという松本明子さんが、疲労研究の第一人者である梶本修身さんに聞きました(構成=山田真理 撮影=本社写真部)

《疲労感》は体からの危険信号

松本 「いつも元気だね」と言われる私ですが、50代半ばにもなるとさすがに疲れを感じることも多くて。今日は先生に、いろいろと教えていただきたいと思って来ました。

梶本 体調としては、これまでどんな悩みがありましたか。

松本 小さいときからずっと悩んできたのが便秘です。40代半ばにテレビの企画で便秘外来に通って改善するまでは、週に1回くらいしかお通じがありませんでした。その頃は肩こりや頭痛、冷え性、肌荒れやアレルギーにも悩まされて――ひどい状態でしたね。

梶本 そうした症状は、すべて「自律神経の疲れ」として説明がつきます。疲労は「体の疲れ」だと思っている方が多いのですが、実は脳にある自律神経が大きく影響しているんですよ。特に消化器系に症状が表れやすい傾向があります。

松本 そういえば! 治療を始める前の検査で、交感神経と副交感神経のバランスが悪かったことがわかりました。交感神経の数値が高すぎて、「これでは車のアクセル全開で急カーブを曲がるようなものですよ」と主治医の先生に言われたのを覚えています。この自律神経って、一体何でしょうか。言葉はよく聞きますが、実際詳しく知らなくて。

梶本 自律神経とは、体を活発に活動させるときに働く交感神経と、体がリラックスした状態のときに働く副交感神経の切り替えを行うスイッチです。脳内に存在する自律神経中枢が、この2種類の神経をうまく調節して体全体を制御しています。

松本 自律神経が体全体に指令を出して、制御しているのですか。

梶本 はい。呼吸、心拍、血液循環、消化吸収、体温調節といった、生命活動のベースとなる機能はすべて。そのため、自律神経は24時間365日、生まれてから死ぬまで休まず働き続けるんですよ。

松本 わあ、大忙しだ。