第二の理由は、アフリカ諸国に対する日本人の関心が、もっぱら資源とか市場とかの、現実的な利益を中心にしており、国民というものに対しては、あまり考慮が払われていないことに対する危惧である。
平和といい、貿易といい、援助というものは、究極的には国民と国民との関係という、いわば人の問題である。この人の面を無視して進められる国際関係の基礎は、きわめて脆弱なものである。
アフリカには経済的には恵まれないが黙々として働き、子孫が自分よりも豊かな生活ができるよう地道な努力をしている国民が多い。こういう国と関係を深めることこそが、同じ道によって今日の繁栄を実現したわが国のとるべき道ではなかろうか。
ルワンダの発展は、ルワンダ人農民、ルワンダ人商人の、地道で自発的な努力によるものである。自分の行動をつうじてしか知ることができない以上、このルワンダ人の努力を紹介する方法は、私の仕事をつうじてしか記述できなかった。しかし、もしこの本に英雄があるとすれば、それは第一にはこのルワンダの農民(カイバンダ大統領を含め)であり、ルワンダ人商人なのである。
帰国後は国際通貨問題の国際会議に出席していたが、昨年末のワシントン会議でそれも一段落したので、5月末日本銀行を去り、国際復興開発銀行(世界銀行)のアフリカ関係の仕事にたずさわることになった。
ルワンダの勤務をつうじて得た、アフリカ人の長所に対する僅(わず)かの理解が、再び役に立つかと期待している。
※読みやすさのため、漢数字を算用数字に、また見出しと改行を、編集部で新たに加えています
※本記事には、今日では不適切とみなされることもある語句が含まれますが、執筆当時の社会情勢や時代背景を鑑み、また著者の表現を尊重して、原文のまま掲出します