始末料理は日本らしい発想

私にとって始末料理は、「こんな工夫ができた」「もっとおいしくなった」という発見や喜びをもたらしてくれるもの。日本らしい発想だな、とも思います。衣服でいえば、年齢的に合わなくなってきた着物を下の世代に譲っていくのも始末のひとつ。あるいは自分で着倒すために色を抜いて染め替えたり、上から濃い地色を重ねて落ち着いた色にしたりして長く楽しむのも始末です。

母が着物の好きな人でしたので、子どもの頃から染め替え屋さんについていって、新しい姿に変わっていくのを目で見て学びました。そして、聞き慣れた「最後の最後はお座布にしたらええやん」という言葉……。私の場合、着物だけでなく、帯を染め替えたこともありました。

最近では、欠けたり割れたりした陶磁器を、漆でつないで金属粉で装飾する「金継ぎ」を楽しむ方も増えているようですね。以前、美術館で修復の仕事をしているフランス人を、金継ぎの専門家に紹介したところ、修復の跡を隠すのではなくそのまま見せたうえ、新たに美しい景色をつくる、という考え方に衝撃を受けていました。

始末とは、まさに新しい価値をつくりだすこと。そして日々の食事はおいしければ長続きし、習慣となります。まずはちょっと一品増やすつもりで、試してみてください。