左乳房の全摘出と右胸の予防切除を決めた

朝が早い世界ですから、生活は一変しました。職場の上司だった夫と結婚して娘も生まれ、料理と水産業の二本立てで頑張っていこう。そう思っていた矢先の19年5月、乳がんが見つかりました。

海でボディオイルを塗っていたら、左胸にゴリッとしたしこりを感じて。最初の病院で乳がんと診断され、セカンドオピニオンを受けた病院では、再発しやすく悪性度の高いタイプのがんであることがわかり、左乳房の全摘手術を勧められました。

また手術前に受けた遺伝子検査で「がんになりやすい遺伝子を持っている可能性がある」と言われ、病巣のある左胸だけでなく、右胸の予防切除を受けることも決めました。娘はまだ4歳。家族で一緒にしたいことも、自分がやりたいことも山のようにある。その貴重な時間を闘病に費やしたくなかったのが、予防切除に踏み切った理由です。

両親には病院も、手術日も、術後の治療法も、すべて決めてから言いました。2人の仕事柄、相談すれば「どこそこの病院の先生がいいらしい」と紹介してくれたかもしれません。でも多すぎる情報で決断がブレるのもイヤでしたし、心配をかけるのも避けたかった。

というのもその年の3月、父が末期の肺がんと診断されて、余命宣告を受けていたからです。「あと半年」と聞いた母は大変なショックを受けていましたし、最期まで自宅で過ごすことを望んだ父の世話で手一杯。父にもしものことがあったら、と毎日眠れずにいるような状態で、これ以上負担をかけることはできませんでした。