青木さやかさん(写真提供:青木さん)
青木さやかさんの好評連載「47歳、おんな、今日のところは『……』として」――。青木さんが、47歳の今だからこそ綴れるエッセイは、母との関係についてふれた「大嫌いだった母が遺した、手紙の中身」、ギャンブル依存の頃を赤裸々に告白した「パチンコがやめられない。借金がかさんだ日々」が話題になりました。第15回は「『カミナリ親父の孫』として」です。

麻雀でカミナリを落とす祖父

うちは両親が共働きだったから、小学校が終わると実家から歩いて15分の母方の祖父母宅に帰った。祖母は専業主婦だった。

祖父は軍人だった。
「さやか、戦時中はだな」
と始まって、聞いていないと
「聞いてるのか!」
とカミナリが落ちた。
いつも株価をラジオで聴いていて、囲碁の番組をテレビで見ていた。

麻雀を教えてくれたのも祖父だった。
「タンヤオとは、どういうものだ」
祖父は、黒い革の高級座椅子にどっかり座って、わたしに聞いた。
「えーと、123とか、345とか、続きのやつが……」
と言いかけたら
「それは、ピンフだ!」
と烈火のごとく怒って、麻雀牌を汲み取り便所に捨てた。この事件があってから、わたしはピンフだけは完璧に覚えた。

祖父は、家で立ち上がることもほとんどしない人だった。
「おい」
と祖母を呼び、気づかないと
「おい!」
と音量を上げた。