松井 人生100年が当たり前になった現代では、70歳でもまだあと30年生きるわけですから、性愛の悦びを諦めてしまうのは惜しい。ただ、それを実践するのは簡単ではありません。妨げとなるのは、「いい年をして、まだそんなこと言っているの?」といった周囲の声と、日本の男たちからはもう恋愛対象から外されているという現実。
秋吉 私はたじろぎません。
松井 それは、《秋吉久美子》だから。年齢的なコンプレックスもないでしょう?
秋吉 いえいえ、ありますよ。だって、私がいるのは、若さがもてはやされる世界ですから。
松井 年齢のハードルや逆風を感じたとき、どうやって心を立て直すんですか。
秋吉 立て直そうとはしませんよ。自分に対するエクスキューズも与えない。現実を受け止めて、分析して、自分の中で消化します。
松井 私はこれでいいのだ、という自信があるのですね。
秋吉 自信とはちょっと違うかもしれない。たとえば、「黙れ、ババァ」と言われたら、「ババァは余計だよ!」と言い返せばいいだけだと思うのです。言われた言葉と同じ強さで跳ね返すことができれば、世間、他人の価値観に翻弄されることはないはずですよ。
松井 自分で自分を縛ってるってこともありますね。
秋吉 現役感たっぷりの松井さんでも、そうなんですか。
松井 女性の人生はさまざまで、独身を貫いて70代に突入する人もいれば、離婚したり死別したりして、再び独りになる人もいますよね。親が生きていたとしても、よほどのことがなければもう干渉されることもない。子どもも、独立していることが多い。だからこそ孤独だと嘆く人もいるようですが、私は70歳になったとき、「かつてこれほど自由だったことがあっただろうか」としみじみ思いました。親にも子どもにも、わずらわされることがない年代。
秋吉 すごくよくわかります。
松井 60代だと、まだ親の介護のことがあったりして、落ち着かない。70代からが《性愛適齢期》だと私は考えています。