女のヒリヒリ感を男は知らない
秋吉 読みながら、この小説を映像化する時はサスペンス仕立てにするといいな、と思いました。
松井 えっ、サスペンス?
秋吉 はい。燿子と沢渡はフェイスブックのメッセージのやり取りをして、心の距離を近づけていきますよね。でも、読んでいてずっと「燿子は騙されているのでは?」とハラハラしてました。思いを込めて書いた文章が、実は相手から嘲笑されていたとしたら。あるいは、少女のように心を躍らせて待ち合わせ場所へ向かったけれどすっぽかされ、落胆するまでの一部始終を見られていたとしたら……。ホラーより恐ろしいし、スリリングで面白いんですよ。
松井 そういうふうに楽しむこともできるんですね。でも、私が重きを置いていたのは「ときめき」のほうなのです。たとえ騙されていたとしても、男性からの誘いに燿子がドキドキワクワクしたのは事実で、けっして噓や幻ではありません。恋愛が終わった後、「いい夢を見た」と思うのか、「悪夢だ」と思うのか――。人生は考え方次第で幸せにも不幸にもなる、ということも書きたいテーマでした。
秋吉 傷つくのが怖いから諦めるのか、傷ついてもいいと覚悟して恋に飛び込むのか。行動ひとつで、その後の人生がまったく変わってしまうから、恋愛は面白いです。