映画監督の松井久子さん(左)と女優の秋吉久美子さん(右)
映画監督の松井久子さんがこのほど発表した初の小説『疼(うず)くひと』は、70代の女性が恋と性の悦びを再び取り戻すまでを描いた物語。この作品を読んで感銘を受けた女優の秋吉久美子さんと松井さんが、人生経験を重ねてからの恋と性を語り合いました(構成=丸山あかね 撮影=宮崎貢司)

理性と本能の間で

松井 お久しぶりです。前にお目にかかったのは私がライターをしていた頃で、何度かインタビューをさせていただきましたね。

秋吉 懐かしい! もう40年くらい前になりますね。

松井 私は秋吉さんより8歳年上なのだけれど、20代前半だったあなたは、ものおじせず、自分の考えをきっぱりとお話しになっていて、圧倒されました。当時は1970年代、学生運動も終わって、なにごとにも冷めている「シラケ世代」を象徴する女優だと言われていましたね。

秋吉 たまたま私がデビューして、時代とマッチしたというだけで。

松井 相変わらずクール(笑)。「セクシー系女優」とも言われていましたが、それはどう感じてらしたのかしら。

秋吉 表現力を評価されたのだと受け止めていました。私は《目的主義》なんです。よい作品を作るという目的に向かって、妖艶な役を与えられれば、観る人のイマジネーションを刺激するのが私の役割と割り切る。その結果としてセクシーと言われるのは、気になりません。でも、素の私が男性の求めるセクシーな女かといったらどうかな? 理屈っぽいし。(笑)

松井 たしかに、男性の目線で作られた創作物に登場する女性は、自分の意思や言葉を持たない人が多いなと感じます。