秋吉 異性に対して開くときの心得みたいなものを今考えていたんですが、「男性を恐れさせない」ことですよね。年を重ねるほどに、欲望や感情をむきだしにしない、自制心が必要だと思います。たとえば家の中に男性という蜂が入ってきたとき、こちらが反抗したりすると、蜂は攻撃してくる。「いつでも窓から出ていっていいのよ」くらいに、余裕を持って接すると。

松井 私の心得は、「大人の恋は秘め事にする」こと。恋愛をすると、つい他人に話したくなってしまいますよね。でも、この歳だとほぼ確実に、「いい年をして」とたしなめられてしまう。自分で自分の可能性を狭めない、思考や行動を縛らせないために必要な心得です。

秋吉 たしかに。新たな気づきを、なるべく多く見つけたいですよね。きっとその先に、よい死が待っているのだと思います。

松井 私は今日、秋吉さんと話していて、性について考えることは生について考えることなのだと改めて思いました。性愛を通して自分と向き合い、精神的に成熟していく。その過程が、人が輝きを放つために必要なのでしょう。

秋吉 同感です。私はヘンリー・ミラーの小説が大好きなのですが、大胆な性描写があっても、読後は人生というものを考えさせられる。『疼くひと』も、女性は何歳からでも《疼く人生》になりうるということを示した、希望の書だといえそうです。

松井 うまくまとめてくださって。ありがとうございました。