夫が救急車で運ばれ

1週間の栄養治療入院から帰宅した翌日のこと。夫が浴槽内で転倒、右足の親指先を切って動けなくなった。10年前に脳梗塞を患ってから血の固まらなくなる薬を服用していた夫は、大量に出血。風呂場から聞こえた大きな物音に気づいて駆けつけた時、夫は血の海になっている浴槽のふちに片足をひっかけ、顔面蒼白で震えていた。

私と次女の力では体が硬直した夫を浴槽から引き上げることができず、救急車を呼び、救急隊員4人に担ぎ上げてもらった。初めて乗り込んだ救急車内の緊張感はハンパではなかった。

コロナ下での搬送で、検温をはじめ、海外渡航歴、コロナ患者との接触など、付き添いの私まで細かに調べられた。夫の流血を見て興奮してしまった私は、体温が38度7分まで上がり、「基本的に37度5分以上の方は付き添いできません」と隊員から言われた。脈拍も100にまで上昇。

「深呼吸して落ち着いてください」と救急の隊員になだめられてようやく下がったが、出発が遅れて夫になじられた。「こいつは家族をほったらかして栄養治療で入院したんです。たいして回復してないうえに、隊員さんにもご迷惑をおかけして」と。私は「あんたが転倒したせいで救急車を呼んだのに」と憤怒を覚えたが、夫が言うように、痩せ続ける自分に不安を感じていた。

病院で手当てをしてもらった夫とタクシーで帰宅したのは夜11時半。血まみれになった風呂場と脱衣所を掃除してヘトヘトの次女が、約4時間の睡眠で翌朝出勤する時、「私、来月結婚して県外に引っ越すまで体持つかな」とポツリとつぶやいた姿が気の毒で涙が出た。

しかし、この後またすぐに、救急車のお世話になるとは夢にも思わなかった。杖歩行になった夫が病院から帰宅した時、タクシーから降りて玄関前の道路で転倒したのだ。またもや全身けいれんを起こして起き上がれなくなり、再び救急車を呼んで、かかりつけ医のもとに運び込んだ。