ポイントは東京へのアクセスの良さ

支援センターでは圧倒的な人気というつくば市だが、確かに人口20万人以上の中核都市で、"移住"というイメージは湧かない。コロナ下で注目を浴びていることを、市は把握していなかった。

つくば市・市長公室広報戦略課の担当者は、「市としての移住に対する特別な支援策はなく、移住に関する相談も週に1回程度です。都心と直結する交通インフラがあり、都心部より安く不動産を入手できることで、つくば市に注目が集まっているのではないでしょうか」と話す。

支援センターでは東京に隣接する人気の自治体のブースを訪れたが、どこも東京へのアクセスの良さが人気の理由で、ある程度、生活環境も整った地方都市の関心が高い。

たとえば神奈川県小田原市でも、市の移住窓口への問い合わせが前年比2倍以上に増えた。小田原市広報広聴課・都市セールス係の高橋良輔さんは話す。

「新幹線なら約30分、在来線でも約1時間と、都心への近さをアピールしてきたことが、コロナによる働き方の変化にマッチした印象です。小田原には海も山もあり、自然豊かな環境ですが、駅周辺には商業施設がコンパクトに集まっています。程よい田舎感が都会の人に受けているように感じます」

コロナ移住者を取材すると、おおむね高い家賃や満員電車など、東京的な高コストで密な暮らしは「捨てたい」一方、収入の柱としての東京は「捨てられない」という事情が交差しているようで、そのことは自らが東京から離れた著者としてもよくわかる。また、そうした背景が移住人気のランキングに如実に表れているよう、取材を通じてあらためて感じた。

※本稿は、中公新書ラクレ『東京を捨てる コロナ移住のリアル』の一部を抜粋・再編集したものです。


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