「私の1歳の誕生日、笑顔の母に抱かれて」(写真提供:大和田美帆さん)

怒りをぶつけたら、母は後ろを向いて泣き出した

一度だけ両親に対して、「なんで私を産んだの」と本気で怒りをぶつけたことがあります。芸能人の子どもということで嫌な思いをいっぱいした小学生の頃。知らない人の視線にさらされている恐ろしさ。一人っ子だったので私の気持ちをわかってくれる人はいない。

その怒りを二人にぶつけたら、母は後ろを向いて泣き出してしまいました。父は「僕たちは誇りを持ってちゃんとした仕事をしている。後ろめたく思う必要はないんだよ」と。そして、「そんなふうに思わせてごめんね」と、しっかり受け止めてくれました。

母は、たぶん私に「ごめんね」と言ってしまったら、仕事に生きてきた自分を否定することになると考えたのではないかなと思います。私を残して仕事に出かけるとき、「ごめんね」という言葉をのみ込んで、明るく「行ってきまーす」と言うのが母でした。

でも、あの頃の私は自分の気持ちに気づいてほしくて、母のやさしい「ごめんね」がほしかった。私自身が働く母親になったいまなら、母の気持ちはよくわかります。

いま、私の娘は5歳。先日、私が茶碗を洗っていたときに、突然母のことを思い出してぽろっと涙をこぼしてしまったんです。そしたら娘が私をぎゅっと抱きしめて、「私がいるじゃない」と。子どもの頃の自分の姿と重なって見え、「ああ、この子を無理にがんばらせちゃいけない」と反省しました。