父と二人、人のためにできることを
20年11月、美帆さんは、獏さんとともに小児がんで闘病中の子どもたちに向けたオンラインコンサートに出演。また今回の「岡江フェスティバル」の収益は、小児がんや難病の子どもたちを支援するNPOなどに全額寄付した。
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私は以前から、病気と闘う子どもたちのためのチャリティ活動をしてきたのですが、母をコロナで失ったあと、父も「これからは人のために生きたい」と口にするようになりました。
ホスピタルクラウン(病院内で心のケアをする道化師)になって子どもたちを笑わせたり、紙芝居や朗読をしたりする「お話オジサン」になりたい、って。タイミングが合ったので子どもたちのためのコンサートに父を巻き込み、「ばくちゃん」というキャラクターで出演してもらうことにしました。
母を亡くして、あらためて感じたのは、人生で大切なのは、蓄えてきたものではなくて、与えてきたものである、ということ。母は周囲の人々みんなを明るく照らし、さまざまなものを残してくれました。それと同じように、入院中の子どもたちに楽しいひとときを届ける活動は、これからも父といっしょにしっかり取り組んでいけたらと考えています。
現在YouTubeで公開中の宮本亞門さん演出のリーディング演劇『スマコ』では、主役を務めさせていただいています。世界で大流行したスペイン風で愛する人を失っても、舞台に立ち続けようとした女優・松井須磨子の役。声をかけていただいたとき、「この役を演じられるのは私しかいない」、そんな思いでお引き受けしました。無料で観劇できますので、一人でも多くの方にご覧いただけたらと思います。
私がこの世界に入るきっかけを作ってくれた母に、もう舞台を観てもらえないことが残念でたまりません。でも、いつも前向きにがんばってきた母への一番の供養は、私も前向きにがんばることだと思うのです。ですので、仕事も子育ても全力でがんばります。いつか「さすが私の子!」と母にほめてもらえる日まで、母が与えてくれた前向きさで生きていきます。