雨でも晴れでも「繊細さん」(著:武田友紀/幻冬舎)

 

相手がいい人なのか悪い人なのかわからなくなったら

カウンセラーという仕事をしているのだから、いつも心穏やかなのだろう、と思われるかもしれませんが、実際には心揺れることもたくさんあります。

カウンセリングでは、私も相談者さんも「相談者さんにとっての幸せ」を第一に考えるので、目的が一致しており、利害が対立することは基本的には起こりません。

ですが、取材や本づくりといった仕事では、私と相手の目的が異なることがままあります。

先方と利害がガツンとぶつかり、しかし着地点をみつけなければいけない。

そんな状況で、相手がいい人なのか悪い人なのか、わからなくなったことがありました。

対立する部分があり、良くしてくれる部分もある。相手のちょっとした言葉遣いや態度に振り回されてしまい、疑心暗鬼になって、私は一体この人にどう接したらいいんだろう? と。

ヘトヘトになってある方に相談したところ、こんなふうに諭されました。

「武田さん、もしかして『いい人』が存在すると思ってない? いい人なんていないんだよ。いい部分があるだけだよ。牛の模様みたいにまだらなんだよ」と。

まだら。その考えは、最初はうまく理解できませんでした。

相手のことを「私とは合わないけど、この人も、この人の家族にとってはいい人なんだろうな」ととらえていたからです。

人間にはいい面も悪い面もある、とは思っていたけれど、そのとらえ方は、「今、その人の『いい面』が自分に向いている」というもの。

「あの件に関してはいい人だけど、この件についてはひどい人」という具合に、結局は「いい人/ひどい人」がいて、場合によって入れ替わるようなイメージを持っていたのです。