バイキング形式に並べられた食事を受け取っていく参加者たち。2019年初夏の筆者訪問時に撮影

 

「森の玉里子ども食堂」。鹿児島県でもっとも早く開催されたこども食堂として、県内ではよく知られている。

なおこども食堂の定義は「こども食堂・地域食堂・みんな食堂などの名称にかかわらず、子どもがひとりでも安心して行ける無料または低額の食堂」だ。子ども専用食堂ではない。大人も高齢者も歓迎だというこども食堂がほとんどだ。

そしてその基本的な性格は「子どもを中心とした多世代交流の地域拠点」だ。そのような場が、全国津々浦々で、同時多発的に生まれ続け、広がり続けている。

同時に、こども食堂は子どもの貧困対策でもある。

お金を配るわけではないし、毎日食事を提供しているこども食堂もほとんどない。経済的貧困・食の貧困を解決できるわけではない。しかし、交流と体験、「つながり」を提供する。異年齢集団での遊び、親とは違う大人、お年寄りのしぐさや匂い、子どものような大人のような若者たち……。

子どもはそうした交流と体験を通じて、価値観を広げ、人生の選択肢を増やしていく。その「つながりの提供」それ自体が、貧困対策でもある。