姉のこと、本当に許せなかった。だけどさ、ちっちゃい頃、一緒に風呂に入ったことだとか、そんなのを思い出してポロリと涙してしまう自分もいる。絶縁しても、思い出は消せないんだ。あっちにいる甥っ子や姪っ子だって、オレにとってはかわいいんだよ。そのことまでは否定できないのさ。
まさか自分が、家族の恥ずかしいエピソードを売ってメシを食うことになるなんて思ってなかったよ。第一、こんなふざけた芸人やってて親父が自殺したとか、やっぱりキツかった。
でも、ずっと隠しておきたかった“ワケあり話”を話す気になったのは、現在の身の回りのことやらでモヤモヤしているものを抱えているからだろう。オレにとってこの仕事は疑似家族みたいなものだったから。30年も一緒に過ごしてきたけど、師匠が会社を去り、オレのもう一つの家族も崩壊したってわけさ。
そんな身辺のゴタゴタに加え、プライベートでは親父や姉に対する整理のつかない思いがいまだにくすぶっている。心にいくつも荷物を抱えていることが、だんだんキツくなってきた。だからガス抜きじゃないけど、こうして話すことでちょっと身軽になりたかったのかもしれない。
西新宿で、みんな仲よく暮らしていた頃を、懐かしく思う。オレの黄金時代ですよ。今は跡形もなく消え、焼け野原が残っているだけ。それはそれでしょうがない。大事なのはそこからどう復興して、街をつくっていくか。それは、新しい家族というインフラをしっかり整備することだと思う。カミさんや息子のことをちゃんとケアしてさ。
オレは昭和の雰囲気が残るスナックが大好きなんだけど、スナックっていいもんだよ。隣り合った80代のおじさんと話してると、親父から聞けなかった話を聞いたような気持ちになる。姉くらいの年回りのおばちゃんと飲めば、「今頃、こんなふうになってるのかな」……って、感傷的になってるオレ、まだ青いね。(笑)