足腰、そして喉も鍛えて健康維持に邁進
これからの生活で気をつけるべきは健康維持だ。病気になっても看病してくれる家族はいない。最後まで身の回りのことは自分でできなければこまる。だから足腰を鍛えるトレーニングを始めた。
きっかけとなった出来事がある。昨秋、電車を降りようと座席から立ち上がった瞬間、急ブレーキがかかり、バランスを崩した。私は中腰のまま、よろよろと走る格好でドアに激突。幸い打撲で済んだが、もしお年寄りや子どもにぶつかっていたらと思うとゾッとする。このままではロコモティブシンドロームになる、と危機感をもった。
スクワットは母のために設置した手すりにしがみついて行う。ウォーキングは坂道を選び、山際のダムまで出かける。途中にある石仏に愚痴を聞いてもらい、心も軽くなる。たまにニホンジカと遭遇することもあり、スリルを味わっている。
最近は喉の筋肉を鍛えることも始めた。ひとり暮らしでは会話が激減する。電話で話しているとき、相手に聞き返されることが多くなった。食べ物の飲み込みも悪い。喉も鍛えなければ、いつ誤嚥が起こるかわからない。
そんなとき、インターネットで「ういろう売り」の口上を見つけた。発音と発声の練習によいらしい。口上を印刷し試してみる。文字を追いながら音読するのだが、思うように口が回らない。「菊栗きくくり、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗」のところでいつもつかえてしまう。頰の筋肉がこわばり、舌先や頰の内側を嚙み、何度も顔をしかめた。
口上は、滑らかに言えても5分はかかる。それが半分も読まないうちから散々な状況で、我ながら腹が立つ。何とかマスターしようとやる気に火がついた。印刷した紙を持ち歩き、隙間時間に練習し、毎日ノルマを課して懸命に覚えている。
ひとり暮らしは大変だ。一体いつになったら楽しめるようになるのか。まだまだ時間が必要である。