『老いの福袋 あっぱれ! ころばぬ先の知恵88』著◎樋口恵子 中央公論新社 1540円
今注目の書籍を評者が紹介。今回取り上げるのは『老いの福袋 あっぱれ! ころばぬ先の知恵88』(樋口恵子著/中央公論新社)。評者は詩人でエッセイストの白石公子さんです。

長い「ヨタヘロ期」をどう過ごすべきか

著者の前作『老〜い、どん!あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』を読んで以来、「ヨタヘロ期」がこびりついてしまった。なんにもないところで足がつっかかった時など、「いよいよヨタヘロ期か」と青ざめる。一方で上手い命名だな、と感心してしまうのだ。人生100年時代、今後は長いヨタヘロ期をどう過ごすかが課題になっていくのだろう。

まさにこれからの言葉なのだ。本書は御年88歳、ヨタヘロ期真っ最中の著者に降りかかる「老いるショック」の数々と、それを乗り越え、やり過ごすための知恵と工夫を綴った痛快・爆笑エッセイ集。前作よりもダジャレ、ぶっちゃけ度が増しているような気がする。なにしろ、第1章の「ローバは一日にしてならず」のトップを飾るのは、駅の和式トイレでの踏んだり蹴ったりエピソードなのだ。著者がいつものように「スッキリした気分で立ち上がろうとしたら──なんと、た、立てない!立ち上がれないのです!」。その後の息も絶え絶えに生還した様子は「そこまで書かなくても」と心配してしまうほど。

他にも、ひといき300メートルしか歩けなくなった。好きだった料理も買い物もおっくうになった。プチ「老人性うつ」等々。昨日できたことが突然できなくなる「老いるショック」に見舞われる。

しかしトイレで立ち上がれなくなっても、はいつくばっても、ただでは起き上がらない著者のたくましさが本書の読みどころだ。必ず、改善点、別の方法、言葉の教訓を見つけて立ち上がる。そして社会に向けて提案、発信しているのだ。

「社会」と関わりながら、どのように「ヨタヘロ期」を過ごすべきか、著者が身をもって実況中継しながら教えてくれている。