出てきた金銭をかすめ取る業者もいる

今回、リビングでゴキブリが大量発生したテーブル付近を片付けていると、テーブルの真下から高さ40センチ程度の金庫が出てきた。中には通帳を含めた貴重品が入っている。そのあたりはゴミでいっぱいだったから、最初は金庫の存在もまるでわからなかった。物を捨てていくうちに出現したのだ。

ほかにも部屋の至るところから証券や通帳などの貴重品類が出てきた。小銭も出てくるたびにビニール袋にまとめていったら、部屋全体で5リットル程度の袋にいっぱいになった。業者の中には金銭をかすめとる人もいると聞く。実際にここでかすめとっても誰にもわからない。本人は預金も証券も記憶にないだろうし、金庫の存在を誰も知らないからだ。

大事なのは信頼できる業者を選ぶこと

自分が一人暮らしなら、もしくは親族に一人暮らしの人がいるなら、あらかじめ信頼できる業者を見つけておいたり、預金の整理をしておくことが必要だと感じる。

『潜入・ゴミ屋敷-孤立社会が生む新しい病 』(著:笹井恵里子/中公新書ラクレ)

心療内科医でジャズ歌手の海原純子氏は、自身の家の掃除を頼んだ際、インターネットで探して出会った整理業者が「すごくいい人であった」と繰り返し言う。

「申し込みを相談している時のメールのやりとりがきちんとしていました。当日の段取りや、トラックの駐車の仕方なども細かく聞いてきたんです」

海原氏は見積もりは部屋の写真を撮影したもので判断してもらったとのことだった。そしてあらかじめ上限はいくらまでは増えてもいいが、それ以上は出せないことを業者に明確に伝えていたという。

整理業者に依頼する場合、大事な物を処分されたり、見積もりより多く請求されたりといったトラブルはよくある。

だからこそ、大事なのは依頼する際に見積もりや契約書がきちんとしている業者を選ぶということだ。場合によっては、地域包括支援センターなどの公的な立場や、相続に詳しい専門家に紹介を相談してもいいだろう。

※本稿は、『潜入・ゴミ屋敷――孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


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