45歳の誕生日で不妊治療を卒業
転機が訪れたのは、45歳の時。私は40歳で結婚したのですが、夫との子どもがほしくて42歳から始めた不妊治療が、精神的なプレッシャーになってしまって。45歳の誕生日で卒業するのが夫との約束だったのに、受精がうまくいかず、内緒で治療を続けよう、とまで思っていました。
でも、思い詰めた私に夫は「もう終わりにしようよ」と。45歳の誕生日、約束通り体温計も基礎体温のグラフも薬も、全部捨てました。「今日で終わり」と確かめ合って、二人で生きていくことを決めたのです。
とはいえ、そんなにスパッと割り切れるものでもありません。しばらく悶々としていたところ、湘南で不動産会社を経営している友人夫婦に、「気晴らしに遊びに来たら」と招かれました。
そこで出合ってしまったんです。今住んでいる湘南の家に。それまで家を買おうなんて思ったこともなかったのに、庭に桜や柿やみかんの木があるこの古い家を訪れたら、すごく癒やされて。その帰り道で、「あの家がほしい」と夫に頼みこんでいました。不妊治療に区切りをつけたいという気持ちもあったし、東京での生活に限界を感じていたのかもしれません。
湘南に引っ越して、本当によかったと思っています。環境も気候もよくて、日曜大工で家に手を入れたり庭木の世話をしたり、夫と海岸まで自転車を走らせたり。当時は心臓の病気に気づいていなかったので、引っ越してから自転車に乗る機会が増えました。100マイル(160km)サイクリングイベントに夫と参加して完走できた時は、嬉しかったですね。