「いつから発症していたのかはわかりません。ただ、ショックを受けた半面、そういうことだったのか、と納得する自分もいました。」
高校3年生の時に全日本代表メンバーに選ばれ、女子バレーボール人気を牽引。引退後もスポーツキャスターとして活躍していた益子直美さんを襲ったのは、高齢者に多いとされる不整脈の一種、心房細動でした(構成=平林理恵 撮影=藤澤靖子)

脈拍が速くなり、ふっと意識が遠のいた

心房細動が見つかったのは、50歳の時です。「まさか心臓が悪かったなんて!」と、ただただびっくり。というのも、元アスリートというプライドもあり、自分の健康を疑ったことがなかったのです。

思い当たる節がなかったわけではありません。プロ自転車選手の夫に勧められて42歳の時に競技用の自転車に乗り始めたのですが、心拍数がすぐ上がることが気になっていました。

平坦な道でも毎分160超え、坂を登れば200超え。時には気が遠くなることも……。でも、「更年期かな」「老化現象だろう」「若いころに体を酷使しすぎたツケかも」など、それらしい理由を並べてごまかしていました。

病院に行ったきっかけは、4年前、これまでにないほど大きな発作が起きたから。ある日、福岡での仕事を終えた私は、翌朝のテレビの生放送出演に備えて夜のうちに東京に戻り、渋谷のホテルに泊まることにしていました。ところが飛行機に乗っている最中に急に脈が速くなり、ホテルに着いても治まらない。次第に息が苦しくなって、ふっと意識が遠のきました。

ハッと気づいて怖くなり、救急相談センターに電話をして症状を話すと、「すぐに救急車を差し向けます」と言われて。でも、そうすると生放送に穴を空けてしまう。一瞬迷い、結局近くの救急病院の連絡先だけ教えてもらって電話を切ったのです。

その後は、姿勢を変えたり、冷やしたり、腹式呼吸をしたり……。症状が落ち着いたのは明け方4時でした。