「仕事」という自分の世界を持つ

生田 結婚する際に、夫の両親から「仕事は辞めてくれるんですよね?」と聞かれました。当時はチーム本拠地の静岡に移住する必要があり、私もそのつもりでいたんです。でも私の母が、「女性も仕事を持つ時代だから、辞めなくてもいいんじゃない? この先、何があるかわからないし」とずっと言っていて。母は働きたくても叶いませんでしたから。

木佐 その通りだと思います。

生田 静岡から東京までは近いので、日帰りでできる仕事をしていました。夫も最初は、仕事をすることに賛成ではなかったのですが、次第に「どんどんやってください。俺もいつまでも現役ではいられないから」と言うようになりましたね。(笑)

木佐 気持ちが変わったんですね、よかった! 私は結婚と同時に夕方6時台のニュースの担当になり、結婚式どころではなくなってしまって。「勉強しなきゃ」って大慌てですよ。でも、夫が試合を終えて帰宅する頃には夕飯を作れていたし、夫は遠征で月の半分は不在なので、私はよく後輩を連れて飲みにも行っていました。(笑)

生田 それはいいですねえ。

木佐 でもある時、気持ちが大きく仕事に傾いて。夫が春季キャンプで家を空けている間、とある事故の取材のため10日間現場に滞在したのですが、そこで報道の仕事に大きなやりがいを感じてしまった。「もっとやりたい」と思っていた時に、上司から「ヨーロッパにサミットの取材に行くか?」って声をかけられたんです。

生田 それは長い期間、家を空けないとできない仕事ですね。

木佐 はい。夫は「彩がハッピーで楽しそうにしているのが一番嬉しい」という人ですが、さすがに申し訳ないかな、と迷っていたら妊娠が判明。神様が家庭を優先しなさいと言っているんだ、と出張は諦めました。その後、彼がメジャーに移籍してアメリカで4年ほど専業主婦生活を送りましたが、やっぱり私は自分の世界=仕事を持っていたほうが心のバランスがとれると再確認しましたね。

生田 私は娘がまだ高校生でお弁当も毎朝作らないといけないので、どうしても家庭中心で考えてしまいます。それでも、彼女に「働いているお母さん」の後ろ姿を見せられるのは良かったかな、と思っているんです。

〈後編につづく