体の変化とうまくつき合いながら

青木 小倉さんのような方が病気の事情を伝えてくださることで、助かる人がたくさんいますね。

小倉 お医者さんは、治療法の研究はしていても、患者の気持ちはやっぱりわからないじゃない。

青木 本当に。患者さんの状況や性格もそれぞれですから、気持ちに寄り添うのは難しいでしょうね。

小倉 もう少し踏み込んだ話をさせてもらうと、膀胱の全摘手術をする際、神経を切断して精囊もとってしまうから、精子を出すことができないの。でも、男性ホルモンは相変わらず残ってるから、性欲はなくならないんだよね。これが困っちゃう。そこで僕が自分で試みたところ、その状態でも、絶頂感を味わうことができるってわかったんだよ。気持ちいいのは、精子が出るからじゃなくて、神経さえ生きていれば快感を感じられるから大丈夫なんだって発見した。

青木 希望がもてるお話です。

小倉 これはどんな本にも書かれていないことだったから、主治医の先生も驚いてたよ。そんな話をしてくれる患者さんは今までいなかったからありがたい、この説明をほかの患者さんにしたら喜ぶ人が大勢いると思うって。つまり病気や手術で失われるものがあっても、信頼のできる人同士なら、年を取っても違う意味のスキンシップやつながりはできるということなんだよね。

青木 私は2度の手術で体に傷ができて、消極的な自分もいて……。小倉さんのお話って、生きていくうえで本当に大事なことです。私は小倉さんがラジオで53歳の伊集院光さんに、「君は僕が『とくダネ!』を始めた頃の年だから、まさにこれからだね」とおっしゃったのを聞いて、すごく勇気づけられました。

小倉 青木さんは今いくつなの?

青木 今年で48になりました。

小倉 それは本当に「これからの年齢」だね。何でも挑戦できるよ。

青木 小倉さんのような、病気を経験されて体の変化とうまくつき合いながら元気で笑って生活している先輩が、勇気をくださっているんです。

小倉 そう言っていただけるとありがたいね。僕が『母』を読んで、青木さんの話を聞きたいって言ってたのに、僕の話ばかりしてしまって恐縮です。

青木 でも、もっともっとお話を聞きたくなってしまいました。

小倉 こんな話でよければ、いくらでも。


●青木さやかさんの公式HP https://z0z0.jp/sayakaaoki/ 
 10月20日から白井晃 演出の「Home I'm Darling ~愛しのマイホーム~」(シアタークリエなど)に出演する。