夫から「昔は君も綺麗だったね」と言われて
佐藤由紀子さん(62歳・仮名=以下同)は、都内に暮らす専業主婦。淡いピンクのジャケットがよく似合う、華やかで美しい女性だ。
「実は私、1年くらい前からプチ整形を続けているんです」
プチ整形とはメスを使わずに施す美容整形の総称で、主にヒアルロン酸やボトックスを皮膚に注入することにより、一定期間中の美容効果が期待できるというもの。ヒアルロン酸は肌のたるみ解消、ボトックスはシワ改善と効果が異なるのだが、佐藤さんの場合は、目の下にヒアルロン酸、額にボトックスを半年に一度の割合で注入している。改めて目の下と額に注目してみると、なるほど確かにスッキリとしている。
「自分では、見た目が10歳は若返ったと思っています。更年期の頃はどんよりとしていて、今みたいな楽しい毎日を送れるとは思っていませんでした。あれは50代前半の頃だったかな。写真を整理していた夫から『昔は君も綺麗だったね』と言われて、大きな苛立ちを覚えたんです」
息子を育て上げ、やれやれと思っていた矢先に同居していた姑が倒れてしまい、40代は介護に追われて過ぎていった。介護の最中に夫の浮気が発覚するという夫婦の危機も勃発。そんな私が綺麗でいられるわけがないじゃない!
夫の心ない一言からほどなくして、息子の結婚式で撮った写真の自分を見た佐藤さんは、厳しい現実に直面する。
「この険しい顔をした老婆が私? と衝撃を受けました。なんとかしたいと猛烈に焦りを感じたものの、その時点では、基礎化粧品を高級なラインに切り替えただけだったんです。プチ整形の存在は知っていましたが、芸能人など容姿の美しさで仕事をしている人が行うものだと先入観を持っていましたね」
ところが還暦を目前にしたある日、佐藤さんの整形に対する認識をガラリと変える出来事が起きた。それは、久しぶりに再会した同世代の女性とランチをしていたときのこと。
ふと、「この人、以前より若返っているような気がする」と感じた佐藤さん。「何か秘訣があるの?」と訊ねてみたところ、プチ整形をしていると教えられたのだ。
「こんなに自然ならいいなと思いました。それに彼女が言っていたんです。人生の『いい時』は短い。いろいろな経験をして、やっと豊かな心が備わったと思ったら、容貌に自信がなくなってしまうなんて、と。でも今は、科学の力で『いい時』を取り戻すことができるのよって。これはもうやらない手はないと、目から鱗が落ちるような思いがしました。お金はかかるけど、自分に対する自信を買っていると考えれば惜しくはありません」
顔が優しくなったら心もおおらかになったと語る。ちなみに1回の施術料は15万円前後とのこと。
「最初は感心しないと言っていた夫が、今は一番喜んでいるんじゃないかしら」と笑う佐藤さんの潑剌とした表情が心に残った。