蜷川さん亡きあと、吉田鋼太郎さんと一緒に

長年シェイクスピアの作品を訳し続けてきましたが、最後の37作目『終わりよければすべてよし』は非常に難解でした。翻訳にあたっては底本のほか、さまざまな版元から出ている原書にあたりますが、イギリス人の偉い学者ですら「ひょっとしたら」と注釈をつけるほど真意が摑みにくい。でも、シェイクスピア作品にはそんな難しさを超えた面白さがあります。

今年5月、彩の国さいたま芸術劇場で『終わりよければ~』が上演されました。蜷川さん亡きあとは吉田鋼太郎さんが演出をしていますが、稽古中も鋼太郎さんと打ち合わせしながら、上演台本に手を入れたり。稽古場では翻訳家の私がシェイクスピアの代わりなんです。台詞に疑問が出ても、シェイクスピアに直接くことはできませんから(笑)。今回も充実した時間を過ごすことができました。

その後もさまざまな仕事のオファーが続き、37作終えたからといって気を抜く暇もありません。それに、観たいお芝居も山ほどあります。実は、昨日も日帰りで福岡まで拙訳の芝居を観に行きました。観終わったらとんぼ返りです。

結局、若い頃から大好きだった芝居にかかわる仕事をし、観たい芝居を観る、それが私にとって何よりのエネルギーの源。「好きなことをする」以上の健康法はないのかもしれませんね。