イラスト:網中いづる

地主さんの面接を受けるため、お庭に入れてもらったら、そこにもあったんです、お稲荷様の祠が。「出た~っ」と思いました。お稲荷様は芸能にも関係があるとか。これはもう、私は向こうから呼ばれているのだと思いました。

その土地を買うからには、この先ずっと、お稲荷様をお祀りする覚悟を決めなくてはいけません。それで謂れを調べたり、京都の伏見稲荷にもご相談したうえで、その土地を買うと決めました。以来、年に一度は宮司さんに祝詞をあげに来てもらっています。お稲荷様に見込まれたと思えば手抜きはできません。どうお祀りするべきかを真剣に考えたものです。

今、そこに住んで16年ほどたちます。不思議なのは、忙しくて枯れ葉の掃除ができない時は、風が回ってその祠のそばに落ち葉が山のように溜まるんです。「はい、集めておきました」みたいな感じですね。それに、他の家のゴミはカラスに食い散らかされるのに、うちは1回もカラスの害にあったことがありません。住み始めた頃はお稲荷様が少し怖かったのですが、だんだん頼もしく感じられるようになりました。

世の中には、目に見えないものも存在していると思います。時にはそのせいで怖い目にも遭うけれど、頑張れているのも自分一人の力ではない気がします。

生きていればいろいろなことが起こるし、悩みも尽きません。努力も必要です。そうやって生き続けていくのは、すごくエネルギーがいる。それでも諦めずに少しずつ先に進もうと思っていたら、きっと、助けてくれる力もあるんじゃないでしょうか。

不思議なことを受け入れ、不思議なものを見てみたいという好奇心を大事にして。これからも、私の隣には、いつも「不思議」があるといいなあと思います。