向こうのほうで舌をベーって出して
綾小路 実は単純な話で、地元の暴走族のOBだったわけです。
清水 「後輩と一緒になにかやりたいと思ったのに」ってこと? それにしても体張ったね。
綾小路 先方はピュアなお気持ちだったらしいのですが、一緒にやるわけにはいかない(笑)。かといって地元に愛されないのもつらい。やんごとなき方々には「あの野郎は挨拶がねえ」と怒られるし、一般の方には「氣志團のせいで地元にこういう人しかいないと思われる」と嘆かれるし。ワシかて泣きたいわい(笑)!
地元で最も有名な政治家といえばハマコー(浜田幸一)さんなんですけど、テレビ番組の企画で、当時の木更津市長に一緒に会いに行ったことがあって。「氣志團と組んでなにかやってみたら?」というハマコーさんからの提案に、市長さんが「いや、彼らの髪型や風体がねえ」みたいなことをおっしゃった。その途端、ハマコーさんが「このハゲ!」って身もふたもないことを。(笑)
ヒャダイン 懐かしい。ハマコー、期待通りですね。
綾小路 「彼はいま木更津の広告塔として頑張ってる。なのに迎えにも出てこない。あげく外見でどうのこうの言いやがって!」って、車椅子で大暴れして出てっちゃった。カメラ回ってるのに大丈夫かな、と追いかけたら、向こうのほうで舌をベーって出して(笑)。「ああいうやつは、一言言っておかないとわかんねえから」って。
ヒャダイン 舌を出す愛嬌がいいですね。ちゃんと引いた視点から、迷惑な老人を演じてたわけだ。
綾小路 あのあとすぐに亡くなられて。でも、新しい市長さんになってからはだいぶ環境が変わって、「氣志團万博」にも全面的に協力してくださるようになりました。
清水 しかしハマコーさんは、相変わらずのパフォーマーだね。
綾小路 必ず田んぼにじゃばじゃばスーツのまま入っていって、農作業中の方と握手。あれ、同じスーツを何着も積んでいたらしいです(笑)。大晦日になると、除夜の鐘を突きに神社にきた人たちに自らプレゼントを配るんですよ。で、1000段以上ある石段をふんどし一丁で上がっていく。もちろん写真週刊誌は仕込んでおいて。
ヒャダイン そこらへんの「冷静と情熱のあいだ」が見事。(笑)
綾小路 地元の小学生が社会科見学で国会議事堂に行くと、必ずハマコーさんが出てきて一緒に記念写真を撮るんです。で、みんなにVサイン入りのバッヂをくれて。「僕まだ実家にあります」って言ったら、「あれはお父さんお母さんに見せるもので、子どもが大切に持ってちゃダメだ」って。(笑)
清水 狡猾さが、徹底してる。
ヒャダイン ここまで戦略的で、自分をガンガン出していくスタイルの人がSNS時代に現役だったら、どんなことしてたんだろう。相性はいいと思うので興味がありますね。菅さんに見習ってほしい。