夫婦ゲンカを目にした子どもが腹痛を訴える理由
親が夫婦ゲンカを始めると、幼い子どもが「おなかが痛いよ」と訴えることがあります。
すると親は救急車を呼んだり、一緒に病院を探したり、自分のことで真剣に話し合う。そうした「共同作業」が生じたことに安心したかのように、病院に連れていったときには腹痛が消えている……。これは実際によくある話です。
この場合、子どもは演技をしているのではなく、言語化の能力が発達していない子どもであっても、親の不仲は生物としての生存の危機を感じるため、本能的にこのようにして非言語的なメッセージを出すメカニズムがあるわけです。
それなのに、「お前の腹痛は、都合が悪くなると出てくる仮病だからな」と、本質に鈍感なまま、平然とこんな嫌味を言い放つことしかできない親がいます。こんな親の下で、どうして自分の感情を大切にできる子が育つと言えるでしょうか。
また、反抗期に差しかかった子どもが非行に走るのも同じです。私にはかつて賑やかだった夜中の暴走族のクラクションは、「父ちゃん、母ちゃん、俺の本当のつらさや寂しさをわかってくれよ、俺のほうを振り向いてくれよ」という悲痛の叫びにしか聞こえてこないのです。
それと同じで、子どもが問題行動を起こすのは、子どもが自分の窮状を伝えようとするからなのです。親に受け止めてもらえず、まだ未熟で不器用な子どもほど、自分の窮状を伝えようとすればするほど「熱量」ばかり上がる=行動や症状がエスカレートするだけで、残念ながら事態は正しい方向には進みません。