暴力や暴言など、中高年の子どもによる問題行動を解決する方法とは?(写真提供:写真AC)
今では10代だけでなく、40代、50代の中高年が老いた親に対して起こした家庭内暴力事件をよく見聞きするようになりました。精神科医として、ひきこもり本人やその家族と接してきた最上悠医師によれば、多くの場合、素の感情を子どもが無理に抑え込んだ結果としてゆがんだ考えや行動が生じていると言います。解決するには、親側が「聴く耳」と「見極める目」を持たなければならないそうで――。

問題行動の背景には「一次感情」の影響が

前回の記事「ひきこもりの40代男性が、父の介護を担うまで回復した道のり。必要なのは「正論」でなく「傾聴」」で中高年のひきこもりについて触れました。しかしひきこもり以上に、親を惑わせ、疲弊させるのが、子どもの暴言や暴力、自傷行為、さまざまな依存症、摂食障害といった問題です。

子どもたちが起こすこうした問題行動には、一次感情が大きく影響しています。

一次感情とはつまり、「本音」の感情です。喜怒哀楽のようなヒト以外の動物にも共通すると考えられているもので、主として大脳の奥深いところで生じ、「基本情動」とも呼ばれています。たとえば、「親が死んで悲しい」とか、「高所や暗闇は怖い」といったものがそれに当たります。

一次感情は、ある種原始的とも言える“素(す)”の感情です。

ときには耐えきれないほどの苦痛を伴うものもありますが、しっかり感じ切ると、時間の経過とともに自然と消退していくようにできています。怖かったジェットコースターが、慣れると怖くなくなったり、失恋の傷手も時間とともに薄らいでいったりするように、です。

つらい自分の一次感情から目を背けたり、親がそれを受けとめてくれなかったりした場合、そのしわ寄せが「二次反応」として表れ、ゆがんだ考えやふくれ上がった感情、不健全な身体感覚やゆがんだ身体反応につながり、結果的にそれで子どもが苦しむ、というメカニズムがあります。