なぜ中高年になっても問題行動をするのか

では、幼い子どもではなく20歳を過ぎた子ども、もっと言えば、40や50を過ぎた子どもまでもが、親の嫌がることをするのはなぜなのでしょうか。

それは、やはり幼い頃から親のために、「本音」の感情を押し殺してこざるを得なかったからです。

赤ちゃんがおぎゃあと泣くように、幼い子どもは駄々をこねます。幼稚園から小学校に上がってからも、「〇〇を買って!」「勉強なんかイヤだ!」などと訴えます。

それに対して、親はときには「わがままを言うんじゃない」と説教をするかもしれませんが、たいていの場合は、泣かせたり言いたいことを言わせたりして「本音」の感情を吐き出させることで、子どものストレスはいったんリセットされます。

子どもが小さいときであれば、親に不満を抱いて、安いお菓子を買ってと駄々をこねたり、おもちゃを投げつけて壊したりといった程度の問題ですみます。

ところが、そういう感情を表現することさえ許されずに大人になると、ストレスをゆがんだ形でため込んでしまうことになります。「本音」の感情をしっかりと親に受容してもらっていないために、生じた感情を感じてリセットするという情動処理の技術がうまく身につかないまま大人になってしまうのです。

感情を抑え込み続けると、ストレスをためこんだまま成長してしまう(写真提供:写真AC)

すでに触れたように、「本音」の感情は「一次感情」とも呼ばれ、「心の羅針盤」とも言われます。これは生物としての「本能」であり、自分はどうしたいかということを感情で感じ建設的に表現できれば、好きなことはやりたい、嫌なことからは逃げる、といった意思表示につながります。

小さい頃から、親によって「そういうバカなことを言うんじゃない」などとただ押し潰されるだけだと、大人になっても言いたいことが言えず、泣き寝入りするだけになります。

すると、いつしか周りの顔色ばかりうかがうようになり、失敗が怖くて挑戦できなくなり、結果、成功するためのスキルも磨かれず、自分の核となる感情が何なのか、自分は何がしたいのかまでもがわからなくなってしまいます。

本音の感情は本能そのものですから、身体感覚とも密接に連動します。

そのため、本音の感情を押し殺していると、人によっては、拒食症のように飢餓状態でも空腹を感じられない、過食症のように食べすぎるほど食べても満腹にならない、過労で倒れるかたのようにいくら行動しても健全に疲労を感じられない、逆にその反動でいつまでも慢性的な疲労・倦怠感や痛みが抜けない、リストカットで快感を感じるといった感覚異常までもが起こるのです。