北海道贅沢ラーメンを食べる(新千歳空港)

死ぬまで毎日楽しく生きられたらそれでいい

引退して次のステージに移行したのが64歳の時です。借金も残っていたので不安はありましたが、年金と原稿料収入でなんとか暮らせるようになりました。収入的には充分とは言えませんが、お金を遣うことがあまりないので、なんとかなっています。買いたいものもないし、外食もほとんどしません。だから経済が回らないのだと批難されるかもしれませんが、引退するまではかなり経済を回していたつもりです。お金を遣って欲しければ、どうしても欲しいものや、どうしても食べたいものを作ってくれと言いたいです。

家に引きこもるのは嫌いではないので、コロナ禍になってもストレスは全く感じませんでした。ストレスフリーになると、自己肯定感が強くなりポジティブな気持ちになってきます。毎日楽しいのですが、唯一原稿が書けない時だけは、本当に死にたいような気持ちになります。でも、これまで締め切りをなんとか守ってきたので、「締め切りになれば書ける」という根拠のない自信を持つようになりました。苦労して書き終わった時の解放感は「喜び」そのものです。思わず踊ってしまいます。

このままの状態で100歳まで生きたい気持ちですが、本当は100歳でも90歳でも80歳でもいいのです。死ぬまで毎日楽しく生きられたらそれでいいのです。一日一日を大事にして、ある時は真剣になり、ある時は楽しく遊んで、その日その日を面白く感じて生きられれば、その連続が楽しい人生になるのです。

100歳までにまだ27年あります。もう一度ショート人生を送れるようで、なんだか楽しくなってきました。30歳で死んだ母親の3倍分までは生きようと思う今日この頃です。

この原稿を書いている時、地球科学者の真鍋淑郎さんが、ノーベル物理学賞を受賞されたことを知りました。嬉しいニュースです。御年90歳で、今も元気に気象変動の研究をされているそうです。ぼくらのお手本と励みになります。

(終)

※長い間、ご愛読ありがとうございました。本連載をまとめた単行本は、後日小社より刊行予定です。どうぞお楽しみに!

末井さんの連載「100歳まで生きてどうするんですか?」一覧