編集者で作家、そしてサックスプレイヤー、複数の顔を持つ末井昭さんが、72歳の今、コロナ禍中で「死」について考える連載「100歳まで生きてどうするんですか?」。母、義母、父の死にざまを追った「母親は30歳、父親は71歳でろくでもない死に方をした」が話題になりました。第19回は、「人間は死なない」です。末井さんが書籍で知った老化研究の最前線、そして本当に「死なない世界」が実現したらと考えを巡らせます
「亡くなった」と言っていいのかどうか
前にも書いたように、ぼくが聖書に興味を持つようになったのは、聖書研究会「イエスの方舟」のリーダー千石剛賢さんの聖書解釈に惹き込まれたからです。
その千石さんは2001年に亡くなったのですが、果たして「亡くなった」と言っていいのかどうか迷うところです。というのは、千石さんは亡くなる1年ほど前から、集会の時に「人間は死なない」とよく話していたからです。人間の体は病気したり老化したりすることが当たり前のように思われていますが、次々と肉体の上に不都合なことが起きるのは、人間が「原罪」のために死ぬことの表れだと言うのです。
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〈もしイエスを死者の中からよみがえらせた方の御霊が、あなたがたのうちに住んでおられるなら、キリスト・イエスを死者の中からよみがえらせた方は、あなたがたのうちに住んでおられる御霊によって、あなたがたの死ぬべきからだをも生かしてくださるのです〉
(ローマ 8-11)
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この聖句の「あなたがたの死ぬべきからだをも生かしてくださる」というところは、病気や老化といった肉体的に不都合な状態が消えるということです。ただし、「イエスを死者の中からよみがえらせた方の御霊が、あなたがたのうちに住んでおられるなら」という条件つきです。それはつまり、罪がない人ということです。
罪がない人の代表はイエス・キリストです。「イエスの方舟」では、イエスを生活すること(キリストの考えを自分の存在において、また生活の場で行為していくこと)によって、罪から解放されることを目指していました。
実際、「イエスの方舟」の人たちは、あまり年を取りませんでした。もう20年以上も行っていないので確認はしていませんが、ぼくが集会に参加していた頃、4年ほど「イエスの方舟」に行くことを中断したことがありましたが、それこそ時間が止まっているかのように、みなさん4年前と全く変わらない感じだったのです。千石さんは、10歳年を取っても、見た目は3歳ぐらいしか年を取ってないように見えると言っています。