稼ぐか、抑えるか、しかない

「青木さんね」
「はい」

「収入と支出のバランスをもう少し考えましょう」
「はい」

「これ、いりますかね、この買い物。いりますか?」
「い、り、ま、せん! いりません。いりますけど」

「娘さんも、これから大学まで行くとなると、お金がかかりますよ」
「はい、ですよね。そういった計算、全然できてなくて」

「青木さん。お金を残すには、稼ぐか、抑えるか、しかないんですよ」
「はい」

「若い頃は、稼げばいい、と思っていいのかもしれないけれど、でもある程度の年齢になったら、この先のことも考えておいたほうがいい」
「はい、あー、投資でもしたらよかったですかね~」

「それからね、最大の投資は自宅のローンの返済だと思ったほうがいいです」
「なるほど」

「大きなお財布にはお金が入る」というゲンかつぎをしている青木さんの大きな財布

 

「まだマンションのローン、あるでしょう?」
「はい」

「本、出されるんですよね」
「はい」

「自費出版ですか? 大丈夫ですか?」
「いえ、出版社さんからです。もちろん」

「凄いじゃないですか!青木さん、勝手に本出すのかと心配しました」
「いや、そこまで。そこまで心配させる何かがわたしにあるんですね」

「まあ、そうですね」